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タイタンの妖女/新世界より
「タイタンの妖女」
カート・ヴォネガットによるSF小説の有名どころな作品です。
大富豪で強運の持ち主であるマラカイ・コンスタントという男、愛犬とともに時間当曲率漏斗に飲み込まれ、過去現在未来すべての事象を把握できる現象と化したラムファードという紳士、その妻ビアトリスを待ち受ける数奇な運命のお話。
おとぎ話のように淡々と物語が展開され、全体的に乾いたユーモアが散りばめられていて、なんかこう不思議なお話でした。
展開がいちいち「どうしてこうなった!」の繰り返しで笑えます。
笑えますが哀愁も感じます。
みんなまじめに真剣に生きた結果変なことになっていくうえ、最終到達点の哀しさ。
しかし同時に、「全部ひっくるめてこれでいいんだよ」という肯定感が感じられて、清々しささえある読後感でした。
あと用語がいちいちかっこよかったです。「時間当曲率漏斗」とか「そうなろうとする万有意思」とか。
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「新世界より」
秋アニメで来るそうなので、始まる前に読んでみました。
貴志祐介の遠未来SFホラーです。
千年後の日本。人類は大幅に数を減らしたが、呪力という強力なサイコキネシス能力を持っている。
科学技術は衰退し、子ども達はしめ縄で囲まれた村で管理され育てられる。
しめ縄の外には奇妙な生物が生息していた。
主人公は早季という少女。5人の幼馴染とともに、廃退的かつ懐古的な世界を冒険し、成長していく。
物語は、彼らが12歳、14歳、26歳それぞれの年齢のときに起きる事件を追う。
呪力とかしめ縄とか宗教的な言葉から、迷信と科学の融合的な雰囲気を期待して読んだけどだいぶ違いました。
どっちかというとグロいクリーチャーのエグい生態と戦術を楽しむ系だったんですね……
グロ描写が苦手だと読みづらいかもしれません。私はちょっと苦手でした。
あと、人間がボノボ型の性愛の社会を築いていて、イライラや不安を解消するために性行為が推奨されています。
アニメのキャラデザが妙に萌えっぽかったり、コミカライズが大変なことになっていたりした原因はここか!正しいと思います。
前半はエグめのジャパニーズハリポタって感じでした。
ちょっと主人公の善意における独善性があまり好きになれなかったのですが、たぶんそれもこの世界の人間の価値観として作者が意図した部分なんだろうなあと思います。
自分たちが管理されていると気づき、管理者と対決する……というわけではなかった点はいいと思いましたが、その分もやっとしたものも残りました。
エンターテイメントとして勢いがあって一気に読めました。
アニメPVで「映像化不可能」とか煽られてましたけど、むしろ映像向きですよ。
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2012_09_29 / comment(0) / trackback(0) / 感想
逆転裁判(映画)
またイロモノ原作ものかーと思われがちですが、作品自体はしっかりしたものでした。
大体ゲーム一作目の物語を下敷きに構成されておりました。DL6号事件ですね。
多少のアレンジ(省略?)を加えながら、ゲームの進行通りに物語が展開していたと思います。
ただ、特に説明もなく、ナルホドくんがナルホドくんと呼ばれていたので、ゲームプレイ済みでないと不親切な導入だったかもしれません。逆に言えば、小ネタを挟んできたりして、元々のゲームファンがニヤリと出来る部分も結構あったようです。
あと結構忠実に進行するので、事件発生→探偵パート→法廷パート、と繰り返され、中盤でさすがに飽きを感じた部分もありました。
キャラクター造形はゲームを頑張って再現していて、結構なコスプレ映画になっていましたが、観ているうちに慣れました。
ナルホドくんがちゃんと違和感なくナルホドくんとして活躍していてよかったです。
ただ綾里家のビジュアルにはたくさん言いたいことがありました。
千尋さんの、千尋さんのおっぱいは!?
マヨイちゃんのメイクがバッチバチだよ!
青みがかった黒髪のカツラがすごく気になるよ!
登場人物の証言が覆されてキレる部分の演出は、個人的にもっと派手な方が好みだったかもしれません。
メイクごと変えるとか。
なんか比較対象としてライアーゲームがどうしても出てきちゃいますが、ライアーゲームのキレ方がわざとらしくて好きです。
あとサユリさんが可愛かったです。
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2012_03_13 / comment(0) / trackback(0) / 感想
カイジ・カイジ2/メゾン・ド・ヒミコ
観っぱなしだったので感想その3
「カイジ」「カイジ2」
原作もアニメもろくに観ず、さらに「カイジ」一作目すら観てない状態で観た「カイジ2」です。
その状態で観て面白かったので気分が良かったです。
藤原竜也に生瀬勝久に香川照之に伊勢谷友介にと安心感のある布陣で役者さんにパワーがあってよかったです。
ヒロインは映画用に付け足したんだろうなあとか、よく考えたらそれはおかしいとか、そういうのはありましたが、
映画ってのは映画館で2時間、勢いで楽しませてくれればいいと思っているので、大して気になりませんでした。
漫画実写化が乱発される中、役者さん選びもそうだけど、全体的に誠実に作ってるなあという印象もうけました。
個人的にはパチンコ台のガトリング砲がすごくバカで気に入りました。
で、その後「カイジ」を観ました。
2のほうが舞台がカジノとかパチンコ台とか、画面として派手で楽しかったですが、
こちらは画面が地味な分、心理戦が直球で描かれてると思いました。
漫画を実写化すると、漫画ならではの部分がどうしても「バカっぽく」「大げさに」見えてしまいがちですが、
こういう極限の心理を描く物語の場合、そのバカっぽさを助長して派手に(舞台っぽく?)してしまうことで
逆に良い効果になっているような気がしました。ライアーゲームも合ってたし。
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「メゾン・ド・ヒミコ」
ゲイの老人ホームを舞台にして、父と娘、父の恋人、住人たちに近所の子供といった人々がぶつかり合い、交流していくヒューマンドラマ。
あえて不細工メイクをして始終仏頂面の沙織(柴咲コウ)が素敵でした。
柴咲コウってなんで仏頂面が似合うんでしょう。
魔性のゲイの青年晴彦(オダギリジョー)は大変魔性でした。
オダギリジョーが魔性、それだけでこの映画7割方成功ですね!
ゲイの人々はたくましく描かれていますが、虐げられてきただけでなく、自らも家族を捨てたり騙したりといった業を背負っていて、生きるためになお背負い続ける。それに対して、かつて自ら彼らに切り捨てられた沙織は憤る。
どちらが良い悪い、ひどいかわいそう、という描き方でない点に誠実さを感じました。
ただ、ゲイって一括りにしてたけど、住人たちはゲイのほかに性同一性障害の人とか異性装者とか、違う概念の人たちが一緒くたにされていた気もするので、そこは気を使っておいたほうが良かったのではないかと思いました。
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2011_12_15 / comment(0) / trackback(0) / 感想
東京異次弦空洞 ライブDVD
平沢進ソロ・デビュー20周年かつP-MODELデビュー30周年記念として、
「凝集する過去 還弦主義8760時間」と題し
今までの楽曲を管弦楽アレンジでセルフカバーするという企画
その一環としてツイッターを始めたヒラサワ
しかしうっかり口を滑らせたことによりフォロアーが急増
フォロアー三万人を超えた記念に、上記企画のフィナーレとして2011年1月に「やらされた」ライブのDVDです。
ちなみにヒラサワフォロアーのことを「馬の骨」あるいは「有象無象」などと呼称します。
インタラクティブな方ではないライブですが、(馬の骨的に)目を離せない演出がもりだくさんでした。
舞台ごとひっぱって登場するヒラサワ
ロングコートでナナフシチェロを演奏するヒラサワ
レーザーハープの演奏が過去のライブよりも派手になっているヒラサワ
アコギを弾き語るヒラサワ
タルボを抱えて暴れるヒラサワ
極めつけはスタンドマイクで歌うヒラサワです。
ウィンドミル奏法も披露します。
タイからのゲストもステージを盛り上げてくれています。
DUSToidのレーザーハープさばきがとてもかっこよかったです。
ミサイルの胡散臭すぎるアレンジが気に入っています。
あと夢みる機械はどのライブでも玩具箱みたいでみていて楽しい曲だなと思いました。
Another Dayは客席の人が羨ましいです。シャウトの後の満足気な顔を見逃しませんでしたよ。
DVD特設サイト http://noroom.susumuhirasawa.com/modules/artist/tokyo-ijigen.html
販売は公式サイトのショップでのみ行われているそうです。
2011_12_03 / comment(0) / trackback(0) / 感想
剣客商売シリーズ
読みっぱなしだったので感想その2
「剣客商売」シリーズ
フジでドラマもやってましたが、藤田まことさんも亡くなり、小兵衛の家のセットも撤去されて寂しい限りですね。
鬼平や仕掛け人を生み出した池波正太郎の代表作のひとつです。
鐘ヶ淵の御宅に隠居する小柄な老人で無外流の剣客・秋山小兵衛、40も年の離れた妻おはる、父に似ず大柄で堅物な小兵衛の息子・大治郎、田沼意次の妾腹の子で男装の女剣客・三冬。
他魅力的な登場人物たちが、江戸を舞台に巻き起こる様々な事件を、剣と人情で解決していく。
文章が美しく、読みやすくて楽しかったです。エンターテイメントしてます。
先に上げた主要人物のキャラ設定なんて、そこいらの漫画より興味をそそる絶妙さです。
年の差若女房に男装の麗人にとがっつりポイントを抑えていらっしゃる。
小兵衛は剣の達人で、老いてなおお盛んで若い女房捕まえ、金払いがよく、人望もあり顔も広い。老中田沼意次ともコネがある。
少年漫画の最強主人公のおっさんバージョンのような人なので、物語もそれに似た安心感や爽快感があります。
良い意味でおっさん向けラノベという印象です。
大治郎さんの若さ故の固さもとても好感の持てるキャラでした。シリーズ後半は出番が少なくなったのがちょっと残念です。
なんだかんだで、完成された小兵衛に対して伸びしろのある大治郎が動くことが物語をみずみずしくしてくれているように思えました。
あと年の差若女房のおはるさんがかわいいです。農家の娘で素朴で料理上手。やきもち焼きだけど明るい。かわいいです。(2回目)
あと池波正太郎作品はだいたいそうらしいのですが、食べ物の描写がとても美味しそうでした。
ねぎオンリーの味噌汁が、お煮しめが、あんなに美味しそうに見えるとは……和食を作りたくなることうけ合いです。
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2011_11_22 / comment(0) / trackback(0) / 感想
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